InkscapeのファイルをCMYKのデータにする
Inkscapeは、Adobe Illustratorと同じドローソフトです。
Adobe Illustratorを使うには、最近ではサブスクリプションソフトになったため、高い月額料金を支払ってしようしなければなりませんが、Inkscapeはそれに負けない高機能を持っていて無料で使用できるフリーのオープンソースのソフトです。
しかし、InkscapeはAdobe Illustratorと異なり、CYMKのデータを作ることが出来ません。
CMYKのデータを作れないということは、印刷用のデータが作れないということです。
しかし、他のフリーのオープンソースのソフトを使うことで、CYMKのデータを作ることが出来ます。
今回は、フリーのオープンソースのソフトを使って、InkscapeのファイルをCYMKのデータにする方法をご紹介します。
この方法はWindows、MacOS、Linuxでも出来ます。
今回はMacを使用して、InkscapeのファイルをCYMKのデータにします。
InkscapeのファイルをCMYKのデータにする前準備
※この前準備をすでされている方は、飛ばして、実際にInkscapeのファイルをCMYKのデータにする方法へ飛んで下さい。
InkscapeはCMYKの色表示をすることが出来ます。
それには、CMYKのカラープロファイルをお使いのパソコンに読み込む必要があります。
使用するカラープロファイルは、Japan Color 2011 Coated.iccがいいでしょう。
このカラープロファイルは、日本の標準的なインクでのコート紙への印刷するのに使用するもので、印刷所へ入稿するのによく使われるからです。
Japan Color 2011 Coated.iccはこちらからダウンロードして下さい。
これをご使用のパソコンのカラープロファイルのフォルダに入れます。
Windowsなら、Cドライブ>Windows>System32>spool>drivers>colorフォルダに入れます。
Macならら、/Library/ColorSync/Profilesフォルダか、/Users/[USER]/Library/ColorSync/Profileに入れます。
Linuxなら、ディストリビューションによって異なりますが、/usr/share/color/iccフォルダか、/usr/local/share/color/iccフォルダか、/home/[USER]/.color/iccに入れます。
InkscapeでCYMKのカラープロファイルの色表示をさせる方法
※この方法をご存知の方は、飛ばして、実際にInkscapeのファイルをCMYKのデータにする方法へ飛んで下さい。
①ドキュメントのプロパティを選択する
ファイル→ドキュメントのプロパティを選択します。
②色を選択する
ドキュメントのプロパティのダイアログボックスの色を選択します。
③カラープロファイルを追加する
使用可能なカラープロファイルの▼をクリックしてJapan Color 2011 Coatedを選択します。
リンクされたカラープロファイルにJapan Color 2011 Coatedが追加されます。
ドキュメントのプロパティを閉じて下さい。
④オブジェクトや文字などにJapan Color 2011 Coatedを適用する
作ったオブジェクトを選択します。
フィル/ストロークのダイアログボックスを開き、CMSを選択します。
<なし>の▼をクリックし、Japan Color 2011 Coatedを選択します。
これでJapan Color 2011 Coatedのカラープロファイルの表示に出来ます。
文字も同様な方法を行うと、Japan Color 2011 Coatedのカラープロファイルの表示に出来ます。
実際にInkscapeのファイルをCMYKのデータにする方法
今回は以下のsample.svgを使用します。
最初にCMYKデータにしたいファイルをPing形式で保存して下さい。
ファイル→PNG画像にエクスポートを選択します。
画像サイズのdpiを350にして、任意の場所にデータを保存します。
ここから、実際にInkScapeでCYMKデータを作る方法を説明します。
今回はImagemagickというソフトを使用します。
コマンドで画像編集が出来るソフトです。
Windows、MAc、Linuxで使用できます。
ダウンロードは以下のサイトから行い、インストールを行って下さい。
①任意のフォルダを作成する
自分の分かりやすいところに任意のフォルダを作ります。
私は、デスクトップにCMYKというフォルダを作りました。
②作ったフォルダにカラープロファイルファイルを入れる
作ったフォルダにImagemagickを使ってInkscapeのデータをCMYKにするために必要なカラープロファイルを入れます。
InkscapeのCMYKデータに変換するのに使うカラープロファイルファイルは、sRGB2014.iccとJapanColor2011Coated.iccです。
sRGB2014.iccはこちらからダウンロードできます。
JapanColor2011Coated.iccはこちらからダウンロードできます。
③作ったフォルダにInkscapeで作ったPNGファイルを入れる
作ったフォルダにInkscapeで作ったPNGファイルを入れます。
私は今回sample.pngを入れました。
④作ったフォルダをターミナルで開く
作ったフォルダを右クリックして、フォルダに新規ターミナルを選択します。
するとターミナルが起動します。
このターミナルにImagemagickのコマンドを使ってInkscapeのファイルをCMYKデータに変換します。
⑤PINGファイルを350dpiのTIFFファイルに変換する
Imagemagickのコマンドで、PINGファイルであるsample.pngを、350dpiのTIFFファイルであるsample.tiffか、sample.pdfに変換します。
なぜPINGファイルをTIFFファイルまたはPDFファイルにするかというと、印刷屋さんでよく推奨されるデータこの2つだからです。
印刷屋さんで推奨される理由は以下の通りです。
TIFFファイルの場合;データは重たいのですが、画質を落とさないファイル形式のため、画質のきれいさを最優先にする出版や印刷の業者への入稿に向いているからです。
PDFファイルの場合:PCと印刷所のPCではOS、解像度、表示サイズ、ソフトのバージョン、インストールされているフォントの種類等環境が異なりますが、文字や画像などを制作者が配置した通りに保持することができるため、異なる環境のPCで開いてもレイアウトが崩れることなく再現・印刷することが可能のためです。
元々PNGデータは350dpiで作ったから、350dpiの必要はないと思われると思われるでしょうが、これを行わないでImagemagickでTIFFデータに変換すると、350dpi以下の解像度になってしまいます。
なのでImagemagickで解像度を350dpiにする必要があります。
【TIFFファイル・PDFファイル共通】
以下のコマンドを入力して下さい(私はsample.png、sample.tiffと入力していますが、皆様はその部分を自分のファイル名に変更して入力して下さい)。
convert sample.png -density 350 -units PixelsPerInch sample.tiff
これで作ったフォルダに350dpiのsample.tiffが出来上がります。
⑥TIFFファイル又はPDFファイルをCMYKデータに変換します。
出来上がったTIFFファイルまたはPDFファイルに印刷用のカラープロファイルのJapanColor2011Coated.iccを埋め込み、CMYKのデータに変換します。
しかし⑤で作ったTIFFファイルまたはPDFファイルですが、カラープロファイルが埋め込まれていないデータです。
この状態で印刷用のJapanColor2011Coated.iccを埋め込んでも、CMYKのデータになりません。
そのためカラープロファイルが埋め込まれていないTIFFファイル又はPDFファイルに、一旦sRGB2014.iccのカラープロファイルを埋め込み、その後に、JapanColor2011Coated.iccを埋め込み直します。
【TIFFファイルの場合】
以下のコマンドを入力して下さい(私はsample.tiffと入力していますが、皆様はその部分を自分のファイル名に変更して入力して下さい)。
convert sample.tiff -profile sRGB2014.icc -intent Relative -black-point-compensation -profile JapanColor2011Coated.icc sample.tiff
これでInkscapeで作ったファイルがCMYKのTIFFファイルになりました。
【PDFファイルの場合】
以下のコマンドを入力して下さい(私はsample.pdfと入力していますが、皆様はその部分を自分のファイル名に変更して入力して下さい)。
convert sample.tiff -profile sRGB2014.icc -intent Relative -black-point-compensation -profile JapanColor2011Coated.icc sample.pdf
これでInkscapeで作ったファイルがCMYKのPDFファイルになりました。
Imagemagickで作ったCMYKデータは、PhotoshopなどのCMYKモードに対応したアプリケーションで作ったCMYKデータと同一のCMYKデータです。
以下の画像は作ったImagemagickで作ったCMYKのTIFFデータをPhotoshopで開いたものですが、CMYKモードになっていて、カラープロファイルはJapanColor2011Coated、解像度は350dpiになっているのが分かります。
【Imagemagickで作ったTIFFファイルをPhotoshopで開いて確認した結果】
【Imagemagickで作ったPDFファイルをPhotoshopで開いて確認した結果】
Imagemagickだと、二つのコマンドを入力するだけでInkscapeのデータをCMYKのデータにすることが出来ます。
PhotoshopなどCYMKに対応する画像編集ソフトを開いて、マウスを使って CMYKデータのTIFFファイル又はPDFファイルを作るより、早い時間で作れるので、この方法はオススメです。
Inkscapeとは
Inkscape(インクスケープ)とは、オープンソースで開発されているドローソフト(ベクター画像編集ソフトウェア)です。
Adobe Illustratorのようなソフトで、画像を座標や方程式などの図形情報の集まりとして表現するベクター画像を作成します。
ベクター画像は、画像を拡大・縮小・変形しても劣化しなく、データ容量が軽いという特徴があります。
Inkscapeは開発の主体はLinuxで行われていますが、LinuxOS版、Unix系オペレーティングシステム版 (OS)、macOS版、Windows版があり、無料で使用できます。
ダウンロードはhttps://inkscape.org/ja/から出来ます。
Inkscapeの使い方
以下のブログ記事でInkScapeの使い方をご紹介しています。
Inkscapeを本格的にマスターしたいという方には、以下の本がありますので、読んでみるといいでしょう。
Inkscapeで描いたイラスト例
Inkscapeを使うとこのようなイラストが描けるようになります。
その例は以下のとおりです。
なおデザインですが、中にはオンラインデザインツールのCanvaで行ったものもあります(イラストはInkscapeで描いています)
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